単なるバイノーラルビート音は効果なしという話

Youtube上やAmazon Music 等で、工夫のない単なるバイノーラルビート音が無料や安価で出ていますが、こういったものは利用しない方が良いというお話です。

バイノーラルビート音が効果がない?

「単なるバイノーラルビート音では効果がなかった」という臨床試験の事例が複数報告されています。

Effect of Binaural Stimulation on Attention and EEG (2013)

Binaural Beat: A Failure to Enhance EEG Power and Emotional Arousal (2017)

Brain Responses to a 6-Hz Binaural Beat: Effects on General Theta Rhythm and Frontal Midline Theta Activity (2017)

その理由として、バイノーラルビートという単純なパルス音が、聞くに堪えない不快な音で、かえって聞く人をイライラさせたことが挙げられています。

その結果、脳波を誘導して、目指している精神状態になることに失敗しています。

単なるバイノーラルビート音の例
バイノーラルビート 6Hzのシータ波(左:250Hz、右:256Hz の場合)

しかし、他の多数のバイノーラルビートを使った実験では、脳波を誘導して、リラックス状態や睡眠に(脳波をシータ波等にした場合)、反対に集中力アップや記憶力アップ(脳波をベータ波やガンマ波にした場合)に成功しています。

失敗事例と成功事例、その違いは、バイノーラルビートをそのままでは使用せず、聞きやすく工夫している点にあります。

バイノーラルビートの効果を確保するための手法

バイノーラルビートの不快さをなくして、脳波を誘導するためには、以下のような工夫が必要です。

1.他の音とのコンビネーション

バイノーラルビートを聞きやすくする方法の第一は、他のリラックスできる音と一緒にすることです。

1)音楽とのコンビネーション

音楽とバイノーラルビートと組み合わせた音源では、市販されているヘミシンクのメタミュージックシリーズが代表的です。

臨床試験でも、ピアノ曲と組み合わせて、ストレスを軽減して、心拍数や血圧などが下がっています。

出典)The Effect of Binaural Beat Technology on the Cardiovascular Stress Response in Military Service Members With Postdeployment Stress (2017)

2)自然音とのコンビネーション

波の音や川の音などの自然音は、バイノーラルビートの音を隠すことが、音楽より簡単なので、作成しやすいです。

ニュージーランドのオークランド大学の報告では、波の音にアルファ波に導くバイノーラルビートを入れて、効果を高めています。

出典)The short-term effects of recorded ocean sound with and without alpha frequency binaural beats on tinnitus perception (2019)

さらに、単純な波音ではなく、AMSR音にすることで、よりバイノーラルビートの効果が高まる可能性も報告されています。(AMSRとはなにかを含めて詳細は 「ASMR とバイノーラルビートの組み合わせが睡眠の質を高める」へ)

3)ピンクノイズとのコンビネーション

音楽、自然音と取り上げて来ましたが、臨床試験はないものの、もっともバイノーラルビートと相性が良いのは、ピンクノイズではないでしょうか。

ヘミシンクでは、ピンクノイズとバイノーラルビートの組み合わせを「ヘミシンク周波数」と呼んでいます。
実際、ヘミシンクのメイン製品である「ゲートウェイ・エクスピリエンス」シリーズや「マインドフード」シリーズでも、ピンクノイズが多用されています。

*ピンクノイズとは、周波数に反比例し、周波数が低いところは強く、周波数が高くなるほど弱くなる雑音(ノイズ)のことです。

2.バイノーラルビートの音量を下げる

耳障りな音の不快感を和らげるには、音量を小さくすることが単純な解決法です。
そのために、次の2つの点が考慮されています。

1)小さな音で聞くように注意書きする

ヘミシンクでは、一部を除いて、バイノーラルビートの音量を低く抑えて収録されています。

加えて注意書きには「なるべく小さい音量でお聞き下さい」と記載されています。

これは、色々な理由づけがされていますが、バイノーラルビートの不快感を小さくするための方法だと考えられます。

実際には、バイノーラルビートの音量を下げることは、元々小さいバイノーラルビートが頭の中で生み出すうなり音をさらに小さく、聞こえづらくするもので、脳波誘導効果を著しく低下させるものです。

2)他の音との音量のバランスを考える

バイノーラルビートと音楽や自然音やピンクノイズなどと組み合わせる場合は、音量のバランスを考える必要があります。

ある調査では、自然音(波の音など)の場合、バイノーラルビートとの音量の比は、2:1がベストだったと報告されています。これよりバイノーラルビートの音量が大きくても
小さくても効果は薄れてしまうということです。

出典)Possible Effect of Binaural Beat Combined With Autonomous Sensory Meridian Response for Inducing Sleep(2019)

ただ、この辺りは、組み合わせる音の種類やバイノーラルビートのキャリア周波数で変わってくると考えられますので、より詳細な調査が必要です。

3.バイノーラルビートを聞きやすくする方法

市販のヘミシンクやブレインシンクといったCDでは、バイノーラルビート自体を少しでも聞きやすくする工夫もされています。

1)キャリア周波数を低めにする

例えば、最初に挙げた同じ6Hzのシータ波に誘導するバイノーラルビートでも、キャリア周波数によって聞きづらさが違ってきます。

「左 97Hz 右 103Hz」 のバイノーラルビートです。上の「左:250Hz、右:256Hz」 と聞き比べてみましょう。

このようにキャリア周波数を低めに設定した方が聞きやすいと感じる方が多いはずです。
実際に、最近のヘミシンクCDでは、キャリア周波数 100Hz前後のバイノーラルビートが多用されています。

注:
誘導したい脳波によって、バイノーラルビートの最適なキャリア周波数は異なるとされています。(例えば、6Hzに誘導したいなら200Hz前後がベスト)
キャリア周波数を、100Hz前後のように低くすれば、聞きやすくはなりますが、効果も下がる可能性があります。

2)バイノーラルビートの和音化

バイノーラルビートを1つではなく、3つ以上の和音で構成する方法です。単音のバイノーラルビートに比べて柔らかい音になります。

市販のバイノーラルビートCDでは、ブレインシンクの一部(「エクスタシー」など)に使われている製品があります。

SAB Quest2でも、バイノーラルビートの和音化手法が使われています。

3)カウンター・バイノーラルビート

ブレインシンク「ハイ・フォーカス」に使われている手法です。(カウンター・バイノーラルビートというのは、管理人の造語です)

この手法については、記事:ガンマ波6 「ハイ・フォーカス」の方式に準拠した音源 に詳しく説明しています。

まとめ

バイノーラルビートは、脳波を誘導する手法として使われていますが、生のままのバイノーラルビートでは、聞きづらく不快な音で、狙った効果を得られません。
脳波を誘導する音源やCDを発売している会社では、聞きづらさを解消するため、様々な工夫をしています。

タイトルとURLをコピーしました